秋…まだ夏

フと、フと、ひむがしを、東を見たら、あんまりたいそうな満月が出ていたので、目をほそめて秋だなあと思う。秋…秋といえば、ともかくも永井龍男の名作中の名作『秋』を想う。

一個・秋・その他 (講談社文芸文庫)

一個・秋・その他 (講談社文芸文庫)

これは、何を隠そう、いや、別に何も隠さないけれども、自分が思う、戦後の、いわゆる現代の「普通の」日本語で、日本(的なもの)について書かれた、最高の短編なのです。


日本家屋にあるような、清潔な埃の匂い。肉をはなれ、枯れることを希求しつつ、しかしやはり枯れきれない。闇から手を伸ばし、おきなの面や祖霊や何かが、彼岸へと手引く。


因みに新潮文庫でもお安く出ているので、運命の女神はんの気紛れがあればご一読を。


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歩道を悠々と大きなコオロギが横切っていった。逝く夏を、惜しんでみたりみなかったり。


リサさ〜ん。いつも聴く曲ながら、なかなかこの歌詞のような境地にはなれないけどね。