どんぐりの音

吉祥寺ロンロン地下の啓文堂の前、英国式マッサージ店と、ワッフルを供する喫茶店の間に、よくワゴンが二台ほど出てアクセサリーなどを売っている。


NHKブックス別巻 思想地図 vol.2 特集・ジェネレーション

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…を啓文堂で買った後、普段なら通り過ぎるところ、猫や犬や、幼い頃の記憶や夢見の風景をそのまま描いたような、小さな額縁をいくつも並べたワゴンに思わず足を止めた。


傍らに立つ店員らしい男性に声をかけると、彼は留守番役で、この絵を描いている画家がいま休憩中で、しばらくしたら戻るとのこと。画家がそのまま売り子をしているらしい。


しばらくしてその人が戻ってきた。小柄で優しそうな男だった。http://www.hideatsu.com/


深い青色の夜の森に、灯りをともした小屋のある絵が気に入り、購入した。

小声で「なぜその絵を選んだのか」と訊かれたので「多くの童話がそうなように、可愛らしい中にどこか怖さがあるところがいい」と答えた。井の頭公園に実際にある建物を描いたらしい。描くさなか、どんぐりが盛んに屋根に落ちて音をたてたので『どんぐりの音』という題名にしたのだと、これまた小声で教えてくれた。