Vanity of vanity,vanity,all is vanity

「空の空、空の空なる哉、都(すべ)て空なり」…酔っ払ってます。べろんべろんに。


かつて禁酒法という狂った法をつくった国があった。よくやったもんだ。いや、そんなことはどうでもいい。


「猿酒」という言葉について、二つの説がある。一つは猿が木の洞に蓄えた果実が自然発酵し、それが酒の起源だというロマンチックなもの。もう一つは猿自体を原料にした酒があるという薄気味の悪いもの。いや、そんなこともどうでもいい。


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吉祥寺で友人と待ち合わせて、どこで飲もうかという段になったが、あまりに夜風が気持ちいいので井の頭公園で飲むことにする。


LONLONでラザニアと鮭のマリネと茄子の煮付けを買う。どうしてもレッドアイが飲みたくなり、トマトジュースと缶ビールと紙コップも買う。


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池端のベンチに座る。月は出ていない。いつもながら対岸の木々のシルエットがいい。池を渡る風もいい。別にクリスチャンでもセバスチャンでもアグネスチャンでも何教徒でもないが「恩寵」という言葉が浮かぶ。


「恩寵」'Grace'


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カイツブリという、ミニマムサイズのカモが可愛い。友人が、こうしていると叫び出したくなると言う。俺も激しく同意する。しかし叫ばない。叫ぶべきだった。


俺は俺で、俺には姉がいたと言った。俺には姉がいた、本当は。「ちゃんと生まれなかった」と、いつか母がポツリと言った。姉がいたらどんなだったかなあと俺が言った。どんなだったかなあと彼も言った。


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国史上有数の酔っ払いだった李白は、水面に映じた月を捉えようとして溺れ死んだ。今夜は月は出ていない。


李白「山中與幽人対酌」  山中にて幽人と対酌す


 両人対酌山花開   両人対酌すれば山花開く

 一杯一杯復一杯   一杯 一杯 復た一杯

 我酔欲眠卿且去   我酔うて眠らんと欲す 卿しばらく去れ

 明朝有意抱琴来   明朝、意有らば琴を抱いて来れ


 (二人で飲んでいると、傍らに山の花が咲いている

  一杯、一杯、また一杯

  酔って眠くなったから、君はひとまず帰ってくれ

  明日の朝、気が向いたら琴を抱えて来なよ)