アンコウ、ハダカイワシ、リュウグウノツカイ

日の落ちて、薄手のシャツが寒かった。寒いというあり方がひさしく、嬉しかった。そうだ、このままどんどん寒くなればいい。。。



熱量がすなわち「生」だとするならば、寒さもまた逆説的に生だ。戸を開けて身の危険を感じるほどの寒さを、吸い込めば喉にふれる冷気を、弧をえがく鳶と己の他に色とてないただ一面の白を、最後に愛でたのはいつだろう。



鼓動もない、藍色の深きに沈んだ船を引き上げる試みを、salvageというが、宗教学におけるsalvationとは「救済」のことをいう。いうまでもなく、結局のところ人間とは救われない存在のことであり、あわれ我らが痛ましい船は、もろもろの気味の悪い海底の住人たちに徒に屠られるまま、果てはそのロゴスもまた、穢れた泥土に帰せしめられるであろう。



必要なのは、救済ではなく「覚悟」なのだ。しかしはたして、覚悟などできるだろうか。みなぎるような安逸をまえにして、保つことができるだろうか。握った拳を、喰いしばった歯を。
http://www.youtube.com/watch?v=dztdRzWxMo4