異邦人

こないだデリダの動画をうpしたこともあって、仏領アルジェリア生まれの知識人つながりということで、カミュのことを思い出した。


ところでフランスの旧植民地は洒落たところが多いと思う。デュラス原作の『ラマン』なんてエロい映画もあったけど(そしてそれについてレオン・カーフェイはいい役者だと思うんだけど、そしてそれについてまたベルトリッチの『ラスト・エンペラー』は、満州族の貴人を描くなら、ジョン・ローンのような南方系の顔立ちより、カーフェイのようなのような、新モンゴロイド直系の顔立ちがしかるべきだとも思うんだけど)ベトナムとか、あと「植民地」というか、あれは何ていうの?「租借地」っての?上海とか。


アルベール・カミュ、『異邦人』。幼い日を貧困の中に過ごしたカミュの言葉。「アフリカでは、海と太陽はただである。さまたげになるのは、むしろ偏見とか愚行とかにあった」


勿論ここでいう「アフリカ」とは、ヨーロッパ側から見た視点で、少なくともサハラ以北、「マグリブ」とでもいうのが適当だろうけれど、太陽。つまり、光と影。アルジェの街。


昔から好きな場面。「走りたいという滅茶苦茶な熱情…」


「しばらくして、十二時半に、発送部に働くエマニュエルと一緒に、外へ出た。事務所は海に面しており、われわれは、太陽に燃え上がる港の中の貨物船を眺めて一瞬ぼんやりした。このとき一台のトラックが鎖の音と爆音けたたましく、やって来た。エマニュエルが『やれるかな?』ときいた。私は走り出した。トラックはわれわれを追い越し、われわれはそれを追って突進した。私は物音とほこりにつつまれた。もはや何一つ見えず、クレーンや機械、水平線に踊る帆柱やわれわれが沿うて走った船体のさなかに、走りたいという滅茶苦茶な熱情だけしか感じなかった。まず私がつかまり、はね上がった。そこから、エマニュエルが腰掛けるのを手伝った。われわれは息を切らしていた。トラックは塵と太陽につつまれ、波止場の不揃いな敷石の上ではね上がった。エマニュエルは息がとまるほど笑った。」